レザークラフトを始めようと思って革を探したとき、最初に感じたのは「多すぎてわからない」だった。
ヌメ革、クロムなめし、タンニンなめし、オイルレザー。バット、ショルダー、ベンズ。1mm、1.5mm、2mm。色は黒から白まで揃っている。
何を基準に選べばいいのか、ネットで調べてもピンとこなかった。
この記事では、端切れセットから始めて3回くらい買い替えながらたどり着いた、革の選び方の話を書く。失敗した革、合わなかった色、最終的に落ち着いた革まで、実際にやってみてわかったことをそのまま書く。
50代からレザークラフトを始めた。道具と同じように、革も遠回りしながら自分に合うものを見つけてきた。
まず、実物を見に行った
ネットの画像だけでは判断できない
レザークラフトの革はほとんどがネット通販で買うことになる。でも、ネットの画像だけでは色・厚さ・硬さのイメージがつかみにくい。
「この色は実際にどんな感じなんだろう」「この厚さって薄いのか、それなりにあるのか」が、画面を見ているだけでは全然わからなかった。
東急ハンズで実物を確認した
そこでまず、東急ハンズの革コーナーへ行ってみた。
実際に手に取って触ってみると、同じ「革」でも種類によって硬さも厚さも全然違う。ネットで見ていたときのイメージと違うものも多かった。眺めるだけでも「こういうものか」という感触がつかめた。
この段階では購入はせず、まずは実物を見るだけにした。
端切れセットで「適正な感触」をつかんだ
両極端を体験してわかったこと
実物を確認したあと、端切れセットを購入した。色々な革が少量ずつ入っているもので、価格も1,000円前後と安い。
実際に使ってみると、大きく2種類の「使いにくい革」があることがわかった。
1つは、1mm以下の薄い革だ。加工はしやすいが、高級感が出ない。縫い合わせても革にコシがなく、よれよれした仕上がりになる。財布やパスケースのような小物を作ると、どうにも安っぽく見えた。
もう1つは、表面にシボ(型押しや自然なシワ模様)がある、厚くて硬い革だ。こちらは硬さは申し分ないが、シボが仕上がりの外観に出てしまい、私の好みではなかった。
この両極端を体験して「適正な硬さ・厚さの雰囲気」が体でわかってきた。
ヌメ革とクロムなめしの違い
初心者がまず知っておくべき基本
革のなめし方によって、使いやすさが大きく変わる。
タンニンなめし(ヌメ革)は植物性の成分で加工した革で、適度なコシがあって扱いやすい。縫い穴も安定して開けやすく、使い込むほど色や艶が変わるエイジングが楽しめる。レザークラフトの初心者には「まずヌメ革から」と言われることが多い。
クロムなめしは化学薬品で加工した革で、柔らかくて伸縮性がある。傷つきにくいが、腰がないため縫い合わせや穴あけがやりにくい。初心者には扱いにくいと感じた。
私もクロムなめしの革を触ってみたことがあるが、「ちょっと安っぽい感じ」という印象が拭えなかった。最終的にヌメ革に落ち着いたのも、この質感の好みが大きい。
革の「部位」で使いやすさが変わる
バット・ショルダー・ベンズの違い
ヌメ革を買うようになってから、同じヌメ革でも「部位」によって使いやすさが違うことに気づいた。
革は牛1頭から取れる部位によって、繊維の密度・硬さ・均一さが異なる。
バットは腰からお尻にかけての部位で、繊維密度が最も高く、硬さとコシがある。財布やパスケースのようなカッチリした小物に向いている。
ショルダーは肩周りの部位で、柔らかくて万能。扱いやすく、小物からバッグまで幅広く使える。
ベンズは背中から腰にかけての部位で、厚みが均一で安定している。ベルトや紐のような長いパーツにも向いている。
私が最終的に使うようになったのはバットだ。適度な硬さとコシがあり、縫い目がきれいに仕上がる。小物を作ったときの「これだ」という感触が一番あった。
色の選び方で失敗した話
ネットの画像と実物は違う
ヌメ革を買い始めてしばらく、色についても試行錯誤があった。
ネットで見て「いいな」と思った明るい色の革を買ったが、届いてみると画面で見た色と実物が違う。明るいブラウンを選んだこともあったが、実際に作品にしてみるとイメージと違い、使わずに残ってしまったものもある。
明るい色は作品に合いにくい
明るい色の革は、加工の難しさというより「作品になったときの見た目」が難しいと感じた。財布やパスケースのような小物に明るい色を使うと、なんとなく「ちぐはぐ」に見えることがある。
青色は意外に相性が良かった。落ち着いた色味なので、作品に違和感が出にくかった。
黒が一番万能
結局、最も使いやすいのは黒だという結論に落ち着いた。
どんな作品にしても黒は馴染む。プレゼントにしたときも「黒が嫌い」という人には出会っていない。迷ったら黒を選べば間違いない。
また、色によって革の硬さが違う感じがある。パステルカラーの絹目型押し革を試したときは、薄いのに硬すぎて使いにくかった。色の仕上げ加工が硬さに影響しているのかもしれない。
よくある疑問
Q. 初心者は端切れセットから始めた方がいい?
試してみる価値はある。端切れセットは1,000円前後で色々な革が入っているので、「薄い革と厚い革の違い」「コシのある革とない革の違い」を実際に体感できる。
ただし、端切れセットには使いにくい革も混じっている。あくまで「感触をつかむため」と割り切って使うのがいい。本番用の革は、感触をつかんでからA4〜A3サイズで購入する方が失敗が少ない。
Q. 厚さはどうやって選べばいい?
初心者には1.5mm前後がひとつの目安とされているが、触っただけでは1mmと1.5mmの違いがわかりにくい。薄くても硬い革は厚く感じるし、厚くても柔らかい革は薄く感じる。
厚さゲージ(ノギスや革用ゲージ)があると、実際の数字で測れるので便利だ。「自分の好みの硬さが何mmの革なのか」を数字で把握しておくと、次に革を買うときに迷わなくなる。
まとめ|遠回りしてわかった革の選び方
革を選ぶとき、最初から正解を引き当てるのは難しい。手に持っただけではわからない。実際に縫ってみて、作品にしてみて、初めて「これは合う・合わない」がわかる。
私の場合、端切れを含めて3回ほど買い替えながら、バットのヌメ革にたどり着いた。シボなし・シンプル・てかてかしていない・ちょっと艶が引けた感じ、というのが自分の好みだとわかったのは、使い続けた結果だった。
これから始める人には、まず端切れセットで感触をつかんでほしい。そのうえで、バットのヌメ革あたりから試してみるのが、遠回りを減らす一番の近道だと思っている。
道具と同じで、革も「自分に合うもの」を探す過程が、レザークラフトの一部になっていく。
