「節約しないと、老後が不安だよ」
「FIREして、早く自由になったほうがいい」
50代になってから、このどちらかの話を、ほぼ毎月のように耳にするようになった。
どちらも、言っている人は真剣だ。本やSNSでも、節約派・FIRE派が熱く議論している。
でも、私はどちらも、しっくり来なかった。
節約は、人生を小さくしている感じがする。
FIREは、仕事から「逃げる」ことに全振りしている感じがする。
私がたどり着いたのは、「豊かな浪費」という第3の道。
節約でもFIREでもない、50代だからこそ選べるお金の使い方。
この記事では、私なりの「豊かな浪費」の定義と、実際の使い方、そして「豊かな浪費じゃなかった」失敗例まで、正直に書きます。
節約もFIREも、何かしっくり来なかった
50代になると、お金の話題がぐっと増える。
「新NISAやってる?」
「退職金の運用、どうする?」
「セミリタイアできるか計算した?」
そして、結論はだいたい二択になる。
「徹底的に節約して老後に備えるか」
「FIREを目指して早期に自由になるか」。
でも、どちらも、
自分の生活に当てはめてみると、違和感があった。
節約は、「今を我慢して将来に備える」という話。
でも、将来って、本当に来るんだろうか。
体力がある今を削って、
ある日突然動けなくなったら、
何のために貯めたのか。
FIREは、「早く仕事を辞める」という目標。
でも、仕事を辞めた先に、本当にやりたいことがあるのか。
辞めること自体が目的になっている人も、
少なくない気がする。
節約もFIREも、
お金を「貯める」「逃げる」という方向に
全力を使っている。
私が感じていた違和感は、そこだった。
「使う」ことが、計算から抜けている。
私がたどり着いた「豊かな浪費」という考え方
50代後半になって、母の介護を経験しているうちに、ひとつの言葉が浮かんだ。それが「豊かな浪費」。
浪費という言葉は、一般的に「悪」とされる。
家計簿でも、「消費」「投資」「浪費」と分けて、浪費を減らしましょう、と教わる。
でも、浪費の中にも、人生を豊かにするものと、そうでないものがある。
同じ1万円を使っても、「買ってよかった」と心から思えるものと、「なんで買ったんやろ」と後悔するものがある。
その差は何か。
そこを分解して考えたのが、「豊かな浪費」だった。
「豊かな浪費」の3つの条件
私の中で、浪費が「豊かな浪費」に変わる条件は、3つある。
① 体験や時間に残るものである
モノを買うだけでは、
「豊かな浪費」になりにくい。
買った直後は嬉しいけど、
数週間で当たり前になって、
押入れの奥に消えていく。
でも、体験や時間に変わるお金の使い方は、
何年経っても記憶に残る。
たとえば、家族で行った旅行。
何年経っても話題になる。
あるいは、時短家電。
毎日の時間を少しずつ返してくれる。
「モノ」ではなく「時間の流れ」を買う感覚があると、
浪費が豊かさに変わる。
② 自分の人生が少し前に進む感覚がある
使った後、自分が少し変わった気がする。
新しい景色を見た。
知らなかったジャンルに触れた。
やってみたかったことに挑戦できた。
こういう「前進の感覚」が残るお金の使い方は、
豊かだ。
逆に、使った後に
「前と何も変わってない」と感じるのは、
ただの散財。
この差は、使う瞬間ではなく、
数日後の自分に聞いてみると、はっきりする。
③ 後悔ではなく、満足で終わる
時間が経ってから、
「あれ買ってよかったな」と思えるか。
「もったいなかったな」と思うか。
この差は、
買う前に自分がどれだけ納得しているかで決まる気がする。
セールだから買った。
他の人が持っていたから買った。
そういう買い物は、だいたい後悔で終わる。
自分で欲しいと決めて、納得して買ったものは、
値段が高くても満足で終わる。
私の「豊かな浪費」リアル5選
抽象的な話だけでは分かりにくいので、私が実際に「これは豊かな浪費だった」と思えた5つを紹介する。
1. 阪神キャンプを観に行った、沖縄の一人旅
費用:約8万円
(飛行機・ホテル・現地移動・食事込み)
「いつか行きたい」だけで10年過ごしていた。
思い切って3日間の一人旅に出た。
結果、人生で一番濃い3日間になった。
3条件すべて当てはまる。
記憶に残り、前に進んだ感覚があり、今も満足している。
2. ドラム式洗濯機とロボット掃除機
費用:約30万円(2台合計)
家電としては高い買い物。
でも、ドラム式洗濯機と
ロボット掃除機で、
毎朝1時間くらい時間が返ってきた。
30万円で、毎日1時間×10年以上。
計算すると、時給計算で1万時間近く買ったことになる。
まさに「時間に変わる」お金の使い方。
3. レザークラフトの工具一式
費用:約3万円(最初の一式)
正直、続くかどうか分からなかった。
でも、始めてみたら、
夜の時間がガラッと変わった。
3万円で、毎晩のちょっとした楽しみが10年続くなら、
安い買い物だと思っている。
4. 音楽フェスのチケット
費用:約1万5千円
「場違いかも」と何年も躊躇していた。
行ってみたら、
「やらない理由は全部自分が作っていた」と気づけた。
1万5千円で、自分の思い込みを1つ外せた。
5. 娘のために使ったレザクラ素材
費用:約5千円
娘にポケットティッシュケースを頼まれて、
革を選びに行った日のこと。
自分のために買うより、
家族のために選んでいるときのほうが、
不思議と楽しかった。
値段じゃない、使い道で「豊かさ」が変わる。
「豊かな浪費じゃなかった」失敗例
正直に書くと、失敗も多い。「豊かな浪費」の3条件を満たさなかった使い方を3つ紹介する。
サブスクを「なんとなく」契約し続けた時期
動画サブスク、音楽サブスク、雑誌サブスク、
電子書籍サブスク、AIサブスク。
気づけば月1万円近く払っていた。
「月500円だから」と軽い気持ちで契約したものが、
積み重なっていた。
サブスク自体が悪いわけじゃない。
本当に使っていて、
自分の時間を豊かにしてくれるサブスクは、立派な豊かな浪費だ。
問題は、「なんとなく惰性で続けていたもの」が混ざっていたこと。
そういうサブスクは、3条件のどれにも当てはまっていなかった。
一度、全部書き出して「時間を基準に選び直す」視点で見直してみた。
減らすことが目的じゃなくて、
「これは自分の時間を豊かにしているか」で選ぶ。
その視点で整理すると、意外とスッキリした。
セールで買った、使わなかった家電
年末セールで、なんとなく「便利そう」と思って買った調理家電。
2〜3回使って、押入れに入ったまま、もう2年経つ。
これも、「自分で欲しいと決めた」わけではなく、「セールだから」で買った典型。
付き合いだけで行った飲み会
50代になると、「付き合い」で行く飲み会が結構ある。
本当に会いたい人との会は、もちろん豊かな浪費になる。
でも、「断りづらくて」だけで行く会は、3,000〜5,000円払って疲れて帰ってくるだけ、だった。
今は、付き合いの会は「行きたいかどうか」で選ぶようにしている。
断っても、関係性は意外と崩れない。
節約至上主義・FIREとの違いを整理する
「豊かな浪費」が、節約やFIREとどう違うのか、自分の中で整理してみた。
節約 vs 豊かな浪費
- 節約の目的:貯める
- 豊かな浪費の目的:使って、人生を広げる
節約は、使わないことが正義。
豊かな浪費は、条件を満たす使い方を積極的にすることが正義。
方向が180度違う。
FIRE vs 豊かな浪費
- FIREの目的:仕事から逃げる
- 豊かな浪費の目的:今を味わう
FIREは、早く自由になることが正義。
豊かな浪費は、今ある時間とお金をどう使うかが正義。
FIREはゴール設定だけど、豊かな浪費は日々のスタンス。
どれが正解という話ではない
節約が合う人もいる。FIREを本気で目指す人もいる。
どれも、その人の人生観だ。
ただ、50代には、豊かな浪費が一番フィットする気が、私はしている。
貯めるだけの時期でもなく、辞めることだけを目指す時期でもない。
「今使える3つ(お金・時間・体力)」を、最も豊かに使える時期だからだ。
ダイ・ウィズ・ゼロから学んだこと
私の「豊かな浪費」という考え方は、『ダイ・ウィズ・ゼロ』という本にかなり影響を受けている。
この本の核となるメッセージは、「お金を使い切って死ね」。
お金を貯めて死んでも、それは人生を味わい損ねたのと同じ、という考え方だ。
ただ、私はこの本を100%受け入れてはいない。
完全にゼロで死ぬのは、家族にも迷惑がかかるし、そこまでの思い切りは私には難しい。
私なりのアレンジは、「使うべき時に、使うべきものに、ちゃんと使う」という考え方。
50代のうちに使うべきものと、老後のために残すべきものを分ける。
その「使うべきもの」への出費が、豊かな浪費になる。
この考え方の詳細は、ダイ・ウィズ・ゼロから考えた50代のお金の使い方に書いたので、合わせて読んでもらえると分かりやすいと思う。
今日から始める、豊かな浪費の3ステップ
最後に、今日から実践できる3ステップを書く。
① 直近1ヶ月の支出を「豊かさ」で振り返る
家計簿やクレカの明細を、ざっと見る。
1つずつ、「これは3条件を満たしていたか」と自問する。
これをやると、だいたい「無意識の支出」が見えてくる。
サブスク、付き合い、セール買い。
ここを整理するだけで、月数千円〜1万円は浮く。
② 先送りしている「投資」を1つ書く
「いつかやりたい」「いつか買いたい」と思っているものの中から、1つだけ選ぶ。
3条件に当てはまるかをチェックする。
- 体験や時間に残るか?
- 人生が少し前に進む感覚があるか?
- 後悔せず満足で終わる予感があるか?
3つクリアすれば、それは「豊かな浪費」候補だ。
③ 小さくてもいいから、今週中にやる
先送りしない。
小さくていい。1,000円でも、1時間でも。
今週中に1つやると決めて、やる。
これができれば、お金の使い方が変わり始める。
よくある疑問
Q. 貯金ゼロでも、豊かな浪費していいですか?
正直に言うと、それはおすすめしない。
「豊かな浪費」は、生活の土台ができている上での話。
まず、生活防衛資金(生活費6ヶ月分くらい)を持った上で、その上の「余白」の使い方として豊かな浪費がある。
土台がないのに「豊かさ」を求めても、長続きしない。
Q. 夫/妻から「無駄遣い」と言われます
これは、私も経験した。
対処法としては、「豊かな浪費の3条件」を一緒に説明してみる。
「なぜ買いたいか」ではなく、「これは体験や時間に残るか」「人生が前に進むか」「満足で終わるか」を、自分で説明できれば、たいてい納得してもらえる。
説明できない買い物は、3条件を満たしていない可能性が高い。
つまり、家族の反対は「いいセンサー」だったりする。
Q. 家族がいるのに、自分のために使っていいですか?
むしろ、使うべきだと思っている。
自分の「豊かな浪費」は、結局、家族にも還元される。
自分の時間・余裕・笑顔が増えれば、家族との関係もよくなる。
「自分のため」と「家族のため」は、実は敵対していない。
自分を後回しにし続けると、逆に家族との関係がしんどくなることもある。
50代は、自分のためのお金の使い方を覚える時期でもある。
節約でもFIREでもない、自分らしい50代のお金の使い方
お金の使い方に、正解はない。
節約が合う人もいる。FIREを目指す人もいる。
どれも、本人が納得していれば、それでいい。
ただ、50代の私がたどり着いたのは、節約でもFIREでもない、「豊かな浪費」という第3の道だった。
体験や時間に残るものに使う。
人生が少し前に進む感覚があるものに使う。
後悔ではなく、満足で終わるものに使う。
この3つの条件で、日々のお金の使い方を選ぶようになってから、不思議と「お金の不安」も小さくなってきた。
貯めるだけでも、逃げるだけでもない、「使って生きる」という選択肢が、50代にはある。
関連して、50代のお金と時間の使い方、ダイ・ウィズ・ゼロから考えた使うタイミングも読んでもらえると、この記事の全体像がより見えてくると思います。
