お金も家もあるのに、なぜか幸せそうじゃない人がいる。
職場の65歳の先輩がまさにそうだ。
土地110坪の二世帯住宅に夫婦ふたり暮らし。
子どもは結婚して家を出ていて、ローンもなし。
家の価値はざっと1億円。
それでも、定年後もまだまだ働くらしい。
昼休みになると、「今日は王将のポイント2倍デーや」とうれしそうに話してくる。
悪い人ではない。まじめで、いつも穏やかだ。
でも、その姿を見てふと考えてしまう。
──この人、楽しいのかな。
お金があるのに、心が動かない
その先輩は、お金も家もある。
高い保険にも入っていて、「もしものためや」と言う。
けれど、もう子どもは独立している。
もし何かあっても、貯金でなんとかなるだろうし、
最悪、家を売ればいい。
それでも保険を払い続け、働き続け、ポイントを貯め続けている。
「安心のため」と言うけれど、
それが本当に“安心”なのかは分からない。
王将のポイントに使われていく脳のリソース
昼休みのその話を聞きながら、心の中で思った。
お金があるんだから、もっと食べたいものを食べればいいのに。
でも、もうひとつ気づいたことがある。
ポイントを貯めることに、頭のリソースを取られている。
ポイ活自体は悪いことじゃない。
けれど、ポイントを貯めるために、
「何曜日が2倍デーか」「あと何円で次のステージか」なんて考えていたら、
その分だけ、脳の容量が“お得情報”で埋まってしまう。
人間の集中力や判断力は限られている。
どうでもいい情報に使うと、
本当に大事なこと──たとえば「何をしたいか」「誰と過ごしたいか」──を
考える余白が減ってしまう。
人生って、シンプルにするほど豊かになる。
得することばかり追いかけると、
頭の中が「損しないための思考」でいっぱいになる。
それって、実は一番もったいない。

自分の時間はタダじゃない
ポイントや安売りと似た話で、
「少し遠くのスーパーの方が安いから」と、
わざわざ車で30分かけて行く人もいる。
けれど、往復1時間。
その時間をお金に換算したことはあるだろうか。
月収30万円の人なら、
1日8時間働くとして時給は約1,875円。
つまり、買い物に1時間かけるだけで、
1,875円分の時間を使っていることになる。
たとえ200円安く買えたとしても、
差し引き1,600円以上の“損”。
もちろん、ドライブや気分転換が目的ならそれでいい。
でも、“安く買うためだけに時間を使う”のは、
時間を「タダ」だと思っている証拠だ。
しかも、そういう人ほど他人の時間も軽く扱う。
「そのくらいやってよ」と、
平気で他人の時間を奪ってしまう。
でも、本当に大切なのは、
お金より“自分の1時間”の価値に気づくことだと思う。
家を守るより、人生を使い切る
先輩は「家は代々受け継いできたものやから」と言う。
でも、子どもは、もうその家には戻る予定はないらしい。
誰も住まない二世帯住宅を守り続けるのは、
もはや“義務”に近い。
家を残しても、思い出がなければ意味がない。
相続税で子どもが困るくらいなら、
今のうちに使って笑顔を残すほうがいい。
家を守るより、人生を使い切る。
それが、本当の“豊かな浪費”だと私は思う。
安心は、積み上げるほど不自由になる
保険も貯金も、安心をくれる。
でも、安心を積み上げすぎると、
「手放すのが怖くなる」。
お金を守っているつもりが、
いつの間にか、お金に守られて生きている。
働く理由も、使わない理由も、
全部“安心のため”になってしまう。
安心は大事だけど、
少し不安があるくらいのほうが、
人は動ける。
使う勇気が、人生を軽くする
老後に必要なのは、守る勇気ではなく使う勇気。
浪費は悪じゃない。
自分や誰かを笑顔にできる使い方なら、
それは立派な投資だ。
・奥さんと久しぶりに旅行へ行く
・孫にお年玉を少し多めに渡す
・友人にごはんをおごって昔話をする
お金は減るけれど、
その分、思い出が増える。
まとめ:お金はあっても、時間は戻らない
お金を守るより、心を動かそう。
家を残すより、思い出を残そう。
保険を積むより、笑い話を増やそう。
安心を積み上げても、
生きている時間は減っていく。
だからこそ、
お金があるのに、幸せそうじゃない──
そんな人生には、ならないようにしたい。
自分の時間はタダじゃない。
どう使うかで、人生の豊かさが決まる。

今日できる一歩
・「もしものため」に取ってあるお金を、少しだけ“今日の笑顔”に使ってみよう。
・ポイントより、人の笑顔を貯める生き方を。
・そして、自分の時間を「価値あるもの」として扱おう。
関連記事はこちら
➡これで迷わず楽しめる|老後資金を見える化して気づいた“無理なく使えるお金”の正体
➡「貯める人生」から「使いきる人生」へ|50代が最も豊かになれるお金の哲学

