認知症の母は、今、
施設で穏やかに暮らしている。
一人暮らしをしていた頃は、
本当に大変やった。
特に、物をなくすことが多くて、
毎日のように家中を探し回っていた。
一番多かったのが、
テレビやエアコンのリモコン。
見つかる場所はいつも不思議で、
座布団の下、洋服ダンスの奥、
時には仏壇の奥から出てきたこともある。
あの探している時間は、
家族にとって大きなロスで、
精神的な疲弊の原因でもあった。
そんな日々の中で、
少しずつ導入していった見守りグッズが、
結果的に「家族の安心」につながった。
どれも高価なものやないけど、
未来の安心を買うための、
賢い投資やったと感じている。
この記事で紹介するのは、6つ。
① キーファインダー(紛失を音で解決)
② tile(スマホで大まかな場所を把握)
③ スマートカメラ(生活リズムの見える化)
④ BoT(外出中の位置をリアルタイム確認)
⑤ 人感ライト(夜の転倒リスクを解消)
⑥ お薬カレンダー(飲み忘れに気づける仕組み)
①リモコン探しに終止符を打った「キーファインダー」
「ないのよ、あれが」が毎日の合言葉やった
リモコンが見つからないと、
母はすぐに私や家族を呼ぶ。
「ないのよ、あれが」と言いながら、
思い出そうと眉を寄せる姿が日常やった。
見つけたときの第一声は、決まって
「誰かが隠したんじゃない?」。
たぶん、自分で置いたのを
忘れているだけなんやけど、
本人は至って真剣。
そんな毎日をきっかけに、
キーファインダーを導入した。
リモコンに小さなタグをつけて、
対応する番号のボタンを押すと、
「ピピピッ」と音が鳴る仕組み。
本体は壁にチェーンで固定して、
これだけは絶対に動かさないようにした。
最初は「どこから音がしてるの?」と
不思議そうにしていた母も、
すぐに「ピピピが鳴ったら探す」という
コツを覚えた。
このシンプルなルールが思った以上に効いて、
家族の捜索時間を大幅に減らしてくれた。
しばらくは平和やったけど、ある日、
そのキーファインダーのリモコン自体が
消えるという、まさかの展開に。
家族全員で大捜索。
ようやく見つかったのは翌日、座布団の下。
それ以来、キーファインダーを見つけるための
キーファインダーを家族用に追加するという、
笑えないような工夫も必要になった。
リモコン以外にも、家の鍵、財布、老眼鏡など、
よく消える物には全部タグをつけた。
電池が切れると音が鳴らへんから、
月に一度は家族LINEで
「電池交換の日」とリマインドしていたのも、
今となっては懐かしい思い出になる。
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②スマホで探せる「tile」
「このあたり」が分かるだけで、捜索範囲が絞れる
Bluetoothタイプの「tile」も試してみた。
スマホのアプリで探せるのは便利やけど、
実際は「このあたり」と表示されるだけ。
方向は分かるけど、
最後は人の勘に頼る場面が多かった。
母が自分で操作するのは難しくて、
最終的には家族が「どの部屋にあるか」を
確認する用途で活躍した。
ある日「財布がない」と電話があって、
アプリを開くと、反応はリビングのあたり。
帰省したときに見つけたのは、
座椅子の裏側やった。
「正確な場所」よりも、
「見当がつく」だけで、
捜索の範囲を大きく絞り込める。
この効率化が、家族の体力と焦りを
守ってくれた。
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③スマートカメラで「生活の見える化」
監視やなくて「会話のきっかけ」になった道具
別居していたから、
玄関・台所・寝室に
スマートカメラを設置した。
正直、最初は「監視しているようで
気が引けるな」と、ためらいもあった。
でも、遠くに住んでいる身としては、
母が倒れていないか、
夜中に徘徊していないか、
薬を飲み忘れていないかを確認できる
「安心感」のほうが、圧倒的に大きかった。
録画を時々見ていると、
母の普段の生活のリズムがよく分かる。
朝は5時過ぎに起きてストーブをつけて、
お湯を沸かしながら、
小さく鼻歌を歌っている。
そんな様子が映っていると、
画面越しに、私も少し微笑んでしまう。
ただ、薬の袋が何度も
机の上に残っている日もあった。
「あ、今日は飲んでないな」と思ったときは、
すぐに電話をかける。
「用事はないけど、元気?
そういえば薬はもう飲んだ?」と聞くと、
母は「あっ、今から飲むとこよ」と慌てて動く。
そういうやりとりが、週に何度かあった。
カメラは、母を監視する道具というより、
会話のきっかけを作る道具になった。
「映像を見るためのカメラ」やなくて、
「1日1回、映像を見てから電話する」
というルールにしたら、
母にとっても「家族が気にかけてくれている」
という安心の道具に変わっていった。
設置直後に、母が「あら、これ何?」と
少し気にしていたけど、
数分後にはもう忘れてしまって、
その後は特に気にされることもなかった。
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④外出時の見守りに「BoT」
「今どこにいるか」が分かるだけで、焦りが消える
母は散歩が好きで、
気分が良い日はよく外へ出ていた。
ただ、認知症が進むにつれて、
帰り道を間違えて迷うことが増えてきた。
そこで、家の鍵に
GPSトラッカーをつけることにした。

選んだのは、Bsize社の「BoT」という
充電式のタイプ。
スマホのアプリで位置を確認できて、
「自宅を出た」「帰宅した」を
自動で知らせてくれる。
設定した散歩コースから外れた時も
教えてくれるし、電池残量も見られる。
このGPSの良さは、
「今、どこにいるか」が分かることで、
不安による時間のロスを防げたこと。
位置が分からへんかったら、
すぐ車を出して探しに行くことになる。
ある日、アプリの通知で
「家を出たまま1時間」が続いて、
さすがに心配になって電話をかけた。
「今どこにいる?」と聞くと、
母は「川沿いの桜が咲いてるわよ」と
のんびりした声。
いつもの道から一本外れて
歩いていただけやった。
少しサイズが大きいのが気になったけど、
「お守りみたいなものだからね」と伝えてからは、
気にせず持って出かけてくれるようになった。
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⑤夜の移動を助けた「人感ライト」
安価なグッズが、夜の転倒リスクをシンプルに解消
母は夜中にトイレへ行くことが多いのに、
「電気代がもったいない」と言って、
照明をつけへんことがあった。
真っ暗な中での転倒リスクに、
ヒヤヒヤしていた。
そこで導入した人感ライトは、
この問題をシンプルに解決してくれた。
人が通ると自動で点灯して、
足元が見えるようになり、
転倒防止に直結した。
100円ショップのものでも十分で、
取り付けも簡単やった。
夜の様子をスマートカメラで見たとき、
ふわっと灯りがつく瞬間に、
安心を覚えた。
小さな光ひとつで、
家族の不安がどれだけ減ったか。
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⑥薬の飲み忘れ防止に「お薬カレンダー」
「飲んだかどうか」をカメラ越しに確認できる仕組み
薬の管理は、認知症の人にとって
一番難しい課題のひとつ。
うちは、市販のお薬カレンダーに
一工夫加えた。
市販のカレンダーは曜日しか書かれておらず、
母が「昨日の分か今日の分か」
分からなくなる。
そこで、曜日の下に
日付を書いた紙を入れて解決した。
さらに、一週間分では補充が間に合わへんから、
同じカレンダーを二つ用意して、
一つを使っている間に、
家族が次週分を準備する運用にした。
このカレンダーを、
カメラに映る位置に設置したのも重要やった。
映像越しに「薬が減っているか」を確認できて、
「飲んでないな」と気づいたときに、
電話で服薬を促す
会話のきっかけになった。
飲み忘れを完全に防ぐというより、
「気づける」仕組みを作ること。
それが一番効果的やった。
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お金で買ったのは、道具やなかった
6つのグッズの合計金額を、
ざっくり計算してみた。
キーファインダー3,000円、tile 3,000円、
スマートカメラ8,000円、BoT月額数百円、
人感ライト100円、お薬カレンダー1,500円。
初期費用はトータルで2万円もしない。
正直、入れる前は「いろいろそろえると
結構するな」と思っていた。
でも、しばらく使ってから振り返ると、
見え方が変わってきた。
このお金で買っていたのは、道具やなかった。
探し物に追われていた、毎日15分が戻ってきた。
夜中に転んでないか、と心配する時間が減った。
電話で「今どこ?」と聞かなくてよくなった。
薬の確認のための、午後の電話が消えた。
もうひとつ、買っていたものがある。
それは、母と接する時間の中身やった。
リモコンを探す15分が消えた分、
その15分で一緒にお茶を飲めるようになった。
「今どこ?」と聞かない代わりに、
「今日は何食べたん?」と聞けるようになった。
道具を入れた前と後で、
家族の会話の質が、
少しずつ変わっていった。
私の結論:家族のために使えるお金がある幸せ
全部そろえる必要はないと思う。
うちの場合、最初に効果を感じたのは、
キーファインダーと人感ライト。
合計3,000円台で、
毎日のストレスが目に見えて減った。
まずは1つから試して、
必要に応じて足していくのが現実的やと思う。
機械が苦手な親でも、大丈夫。
うちは「本人が操作する道具」より、
「見守る側が使う道具」を中心に選んだ。
カメラやGPSは家族側だけで完結する。
本人の負担を増やさないことが、
長続きのコツやった。
50代は、お金・時間・体力がそろう
最後の時期と言われる。
このタイミングで、家族のために
使えるお金があるというのは、
本当はそれだけで
幸せなことなのかもしれへん。
母との日々を振り返って、
そう思うようになった。
道具で全部が解決するわけやない。
でも、道具で家族の不安を
1つでも減らせるなら、
それは「節約すべき支出」やなくて、
家族の安心と自分の心の余裕を生む、
明確な投資やと思う。
家族と一緒にいられる時間を、お金で守る。
私はそれを「豊かな浪費」と呼んでいる。
50代以降のお金の使い方として、
これ以上のものはないと思っている。
家族との時間や、お金の使い方の話は、こちらの記事も参考になります。
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