認知症の一人暮らしで最も不安なのが「外出による迷子」。GPSを持たせても心配が消えない…そんな悩みを持つ方へ。この記事では、私が実践して効果があった、“家で熱中できる時間を作ることで外出が減った方法”を紹介します。特別な道具は必要ありません。私の母が笑顔と落ち着きを取り戻した「折り紙ルーチン」の実例です。
一人暮らしの認知症で最も不安だった「外出・迷子」問題
一人暮らしの認知症介護で、私が最も不安だったのは、外出による迷子でした。
鍵を持ってふらっと出てしまい、帰れなくなる…。
頭では「GPSがあるから大丈夫」と思いたくても、心は追いつきません。
- 夜中に外へ出てしまうかもしれない
- 駅やバスに乗って遠くへ行ってしまうかもしれない
- 見つかっても、本人は混乱しているかもしれない
そんな想像が、毎日頭から離れませんでした。

GPSがあっても不安が消えなかった理由
母にはGPSを持たせていました。しかし、それでも不安は残りました。
GPSはあくまで**「居場所を知る道具」であって、「迷子そのものを防ぐ道具」ではありません**。
通知が鳴るたびに胸が締め付けられ、心が休まる日はありませんでした。
止めるほど逆効果…外出を“しないで済む状態”が重要だった
外出を減らしてほしくて「行かないで」と止めても、かえって外出への意識が強くなることがあります。
そこで私は、考え方を変えました。
外出を止めるのではなく、“家にいたくなる理由”を作る。
この視点が、後に大きな効果を生みました。
自宅で熱中できること探しが始まった|まずは2つ失敗
「家で熱中できるものが見つかれば、外出は自然と減るはず」
そう考え、母に合う“室内でできること探し”が始まりました。
しかし、最初からうまくいったわけではありません。

ジグソーパズルは逆効果だった(自信喪失)
最初に試したのはジグソーパズルでした。
細かい作業が好きだった母なら楽しめると思ったのですが、結果は逆でした。
ピースが理解できず、幼児向けパズルでも難しい状態。
できない自分にショックを受け、気持ちが落ち込んでしまいました。
「できない」という体験は、認知症の方にとって自信の喪失につながると痛感しました。
習字は続かなかった…達成感が薄い
次に試したのは習字です。
短時間なら集中できますが、続きませんでした。
理由はシンプルで、
- 同じことの繰り返しで変化が少ない
- 書き終えても達成感が弱い
認知症の方には、「できた!」という実感が大切。
達成感が弱いことは、長続きしない原因になりました。
この経験から、私は一つの条件に気づきました。
「簡単で、繰り返せて、成果(作品)が残るもの」が必要。
成功のカギは“作品選び”だった|たどり着いた折り紙ルーチン
ここで私は、母が昔、千羽鶴を折って誰かに贈ったことを思い出しました。
折り紙なら、昔の“得意だった感覚”が呼び戻せるかもしれない。そう考えたのです。
そして、折り紙は当たりでした。
達成感がカギ。たどり着いたのは“ブロック折り紙の花瓶づくり”
折り紙で大切にしたのは、**「達成感が目に見えること」**でした。
昔ながらの鶴や箱は、完成しても一瞬で終わってしまい、次につながりません。
「できた」で終わり、ワクワクが続かないのです。
そこで私が工夫したのが、作品の選び方でした。
たどり着いたのは、同じ形のパーツを組み合わせて立体的な花瓶を作る**“ブロック折り紙”**。
これが大正解でした。
- 簡単に作れるパーツ作りは母が担当
- 難しい組み立ては私が担当
この分担がぴったりハマりました。

最初に選んだ作品は花瓶。 花瓶は見た目の完成度が高く、まさに“作品”。
完成した時の達成感が大きく、母の表情が一気に明るくなったことを覚えています。

完成した花瓶は部屋に飾るだけでなく、近所の方にプレゼントしました。
「すごい!」と喜ばれる経験は母の自信につながり、さらに意欲を高めました。
折り紙ルーチンで起きた良い変化
折り紙ルーチンを始めてから、母にも家族にも、良い変化が生まれました。
外出が減り、迷子リスクが大きく軽減
折り紙に集中する時間が増え、外出が自然と減りました。
「行ってみよう」という隙がないほど、夢中になってくれたのです。
その結果、迷子への不安やGPS通知のストレスが大きく軽減され、家族の安心にもつながりました。
生活リズムが整い、日中の不安が減った
折り紙はラジオを聴きながら落ち着いて行えるため、昼夜逆転防止にも役立ちました。
午前と午後に少しずつ取り組むことで、自然と生活リズムが整いました。
作品が喜ばれ、承認欲求が満たされて笑顔が増えた
完成作品は家に飾るだけでなく、知人や近所の友人へプレゼントしました。
「すごいね」「きれいだね」と喜んでもらえることが、母の笑顔と自信につながりました。
すぐ始められる“室内で熱中できる趣味”の見つけ方
折り紙以外でも応用できる、趣味選びのポイントです。
昔の「得意」や「褒められた経験」をヒントに
- 昔よくやっていた
- 得意だった
- 褒められた経験がある
この3つが揃うと、再現性と成功体験が得られやすいです。
初期ハードルを下げる(短時間・簡単・形が残る)
- 15〜30分でできる
- 見れば分かる形にしてあげる
- 完成形が残ることで達成感が出る
継続の鍵は、**「簡単にできて、成果が見える」**こと。
家族は少しだけ“応援役”になればOK
作品を見て、褒めて、飾る。
この3ステップが、次への意欲につながります。
続けてほしいなら、“喜んでくれる人”の存在が必要です。
まとめ|外出を止めるより“家で楽しい”を作るほうがうまくいく
- 「行かないで」と止めるより、家にいたい理由を作る
- 成功体験が得られる趣味は、外出防止に効果的
- 大切なのは、“できることを活かし習慣化する仕組み”
認知症の介護には正解がなく、悩む日もあります。
しかし、“家で楽しい時間”が増えるほど、本人も家族も心が軽くなると感じました。
さらに、DIYでギャラリーも製作
折り紙ルーチンが習慣になってきた頃、私は思い切って母の部屋を折り紙ギャラリーに作り替えました。
壁一面に飾れる棚をDIYし、作品がいつでも目に入るようにしたのです。
材料費もかかり、「高齢の母の部屋を今さら改造する必要があるのか…」と迷いもありました。
しかし、飾られた作品を嬉しそうに眺める母の姿を見て、この判断が間違っていなかったと思いました。

お金をかける価値は、母の笑顔と自信につながるかどうか。
そう考えると、この出費は無駄ではなく、私にとっての豊かな浪費でした。
関連記事はこちら
➡介護の負担を減らした救世主|スマートリモコンで得た“時間と安心”
➡認知症 見守りグッズ6選|家族が本当に助かった安心アイテム

