『DIE WITH ZERO』とは?
『DIE WITH ZERO(ダイ・ウィズ・ゼロ)』は、米国の投資家ビル・パーキンスが書いた世界的ベストセラーです。
テーマは明快で、「死ぬときにお金を残すのではなく、生きているうちに経験を最大化する」こと。
日本でも翻訳版が出版され、「老後資金をどう使えばいいのか?」と悩む50代・60代世代を中心に大きな反響を呼びました。
書店のマネー本コーナーに並んでいるので見かけた方も多いのではないでしょうか。
一見すると「浪費をすすめる本」のように聞こえますが、実際はそうではありません。著者が繰り返し語るのは、年齢ごとの適切なタイミングでお金を経験に使い切ることこそが、後悔のない人生をつくるということです。
つまり「無駄に残さず、計画的にゼロで死ぬ」ための人生哲学と実践法を提案しているのです。
日本人が抱えがちな「お金の勘違い」
日本では「老後に備えて貯金すること」が美徳とされ、コツコツ貯めることこそ安心につながると考えられてきました。
しかし著者は、「死ぬときに銀行口座に大金が残っていても、それは“使いそこねた体験”の象徴にすぎない」と断言します。
お金を残すよりも、人生の今この瞬間に使って体験を増やす方が、幸福度ははるかに高いというのです。
この発想は、日本人が抱える「老後不安」と真逆ですが、だからこそ新鮮で、強い説得力を持っています。
退職金と老後資金の正しい使い方
日本人にとって退職金は人生の大きな節目です。
数千万円単位のまとまったお金を手にする機会ですが、多くの人は「とにかく残さなければ」と思ってしまいがちです。
しかし『DIE WITH ZERO』的に言えば、これは大きな機会損失です。
- 60代前半はまだ体力が残っている
- 家族や仲間と過ごせる時間がある
- 人生経験を深められる最後のチャンス
この時期にこそ、退職金を「経験」へ投じるべきです。
旅行、趣味への挑戦、学び直し、仲間との再会――こうしたことにお金を使うことで、人生の思い出資産が一気に増えます。
もちろん、医療や介護のための安全資金は必要です。
しかしそれを確保した上で、残りを「豊かな浪費」として使うのが最も合理的です。

子どもや孫への「早めの援助」
多くの親世代は「子どもに資産を残す」ことを前提にしています。
しかし著者は、遺産を死後に残すのは非効率だと指摘します。
なぜなら、子どもが本当にお金を必要とするのは若い時期(26歳〜35歳)だからです。
- 大学や専門学校の教育資金
- 結婚資金
- 住宅購入の頭金
こうした場面で支援することが、子どもの人生を大きく助けます。逆に、自分が亡くなったあとに残しても、子どもはすでに50代や60代になっており、必要性は薄れています。
つまり、「早めの生前贈与」こそが一番効果的な相続の形です。
さらに親にとっても「渡して喜ばれる姿を見る」という経験を得られるため、まさに双方にとって豊かな体験になるのです。
50代・60代前半は「黄金の浪費期」
『DIE WITH ZERO』を日本に当てはめると、まさに50代こそが最大の使いどきです。
なぜなら、
- お金・時間・体力の3つがそろう最後の時期だから。
- 子育てが一段落し、家族で動きやすくなる。
- 仕事仲間や友人ともまだ現役として関わりがある。
この時期に積極的に使わなければ、70代以降は「お金と時間はあっても体力がない」という状態になってしまいます。
「今使わんと、いつ使うねん!」という言葉が、まさに現実味を帯びてくるのです。

健康こそ最大の投資先
どれだけ資産があっても、健康を失えば楽しめる経験は限られてしまいます。
だからこそ健康は、最大の投資対象であり「未来の浪費」を保証する基盤になります。
- 人間ドックや定期健診を受ける
- 運動習慣や食生活に投資する
- 睡眠の質を高めるグッズやサービスを導入する
- マッサージや温泉、スパで心身を整える
これらは贅沢に見えて、実は「人生の体験を守るための先行投資」です。
著者も「健康に投資せよ」と繰り返し述べていますが、まさにその通りです。

人生の「思い出ポートフォリオ」を設計する
お金を効率的に使うには、「思い出をポートフォリオのように積み上げる」意識が必要です。
- 毎年恒例の家族旅行を企画する
- 還暦祝いなど節目のイベントを盛大に行う
- 孫と一緒に体験できるレジャーや旅行を組み込む
こうした「イベント」を意図的に設計して資金を集中させれば、人生を振り返ったときに「思い出の資産」が豊かに積み重なります。
お金を数字で貯めるのではなく、思い出という形で貯める――これが『DIE WITH ZERO』的なお金の使い方です。
死を意識して逆算する
日本では「死を語るのは縁起でもない」と避けがちですが、『DIE WITH ZERO』では「死を意識するからこそ人生が変わる」と説かれています。
- 自分の寿命を仮定して「資産をいつまでに使い切るか」を決める
- 80歳までに必ずやりたいことを書き出す
- 70代以降は「小さな楽しみと安全資金」にシフトする
有限であることを自覚すると、「お金を残す」より「今をどう生きるか」に自然と意識が向きます。
まとめ|50代からの「ゼロで死ぬ」実践法
- 遺産は「生前贈与」で早めに渡す
- 退職金は健康寿命のうちに経験へ投資
- 50代・60代前半は黄金期、浪費を恐れるな
- 健康は最大の投資対象
- 人生イベントを設計して「思い出の資産」を築く
『DIE WITH ZERO』のメッセージは、日本の50代にとって「老後資金をどう使うべきか」の明確な答えになります。
お金を貯め込むのではなく、「豊かな浪費」として使うことで、老後の不安よりも「今この瞬間の充実」を手に入れられるのです。
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