【認知症シリーズ第7話】入所してからの1ヶ月──“家では守れない”を受け入れていく時間

家族と仲間
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入所は準備していたけれど、想定外のタイミングで訪れた

母の入所は、落ち着いた段取りではなく、
骨折からの入院混乱、病院からの「対応不可」の通告、
そして自宅での泊まり込みを経て、
急遽バタバタの入所となった。

半年前から施設見学だけはしていたので、
「無理やり感」はなかったが、
まさかこんな形で入所するとは思っていなかった。


母は“ここはデイサービス”と思い続けていた

入所して数日で落ち着くわけではなかった。
むしろ最初の1ヶ月は、ほぼ毎日のように電話がかかってきた。

「私はデイサービスから帰られへんの?」
「そこ、デイサービスやないで。骨折のリハビリ病院やで」
「……あ、そうなんや」

このやり取りを夕方になるたびに繰り返した。


夕方症候群も重なり、帰宅願望は強かった

夕方になると不安が強くなり、
「帰りたい」「タクシーで帰る」と怒る日もあった。
そのたびに施設のスタッフが丁寧に対応してくれた。

「ごはん食べてからにしましょう」
「今日はここでゆっくりしましょうね」

スタッフの声かけのおかげで、
なんとか落ち着く日が続いた。


生活面はしっかり守られていた。食事も毎食完食

不安の電話は多かったが、生活は安定していた。

・毎食しっかり食べる
・リハビリにも参加
・夜間の見守りもしっかりしてくれる

家では火の消し忘れや転倒の危険が常にあったが、
施設ではその心配がなくなった。

生活の安全が“仕組み”の中で守られている安心感は大きかった。


1ヶ月が過ぎて、電話の回数がゆっくり減っていった

入所後1ヶ月が経つと、
毎夕の“鬼電”が少しずつ減ってきた。

完全になくなったわけではないが、
少しずつ落ち着き始めた。
施設の生活リズムに馴染んできたのだと思う。

スタッフから
「お気に入りの職員さんができたみたいですよ」
と聞いたときは、正直ほっとした。


生活は落ち着いたが、会話は“自宅のままの時間”が続いた

面会に行くと母は笑顔だが、
話す内容は現実とは一致しない。

「今朝な、朝ごはん作って、お風呂掃除して、買い物して…」
「そうなんや。忙しかったんやなぁ」
「そうそう。それでデイサービスに来たんや」

母にとって“自宅にいる”という設定は続いたまま。
それを否定する必要はなかった。

大事なのは、
安心して会話ができることだけだった。


入所という選択は、結果として母にも家族にも正しかった

入所直後は、
「家で看るべきだったのでは?」という後悔が少しあった。

でも1ヶ月過ぎて、
母の落ち着いた様子を見て、
その気持ちは薄れた。

家族だけでは守れない瞬間がある。
その現実を受け入れたとき、
初めて“施設に任せる”という選択が
家族の愛情のひとつだと思えた。


読者へのひとこと

認知症の入所は、
計画通りに進むことはほとんどありません。

ただ、
本人が安心して生活できる場所
を見つけられたなら、
それは立派な「家族の選択」です。

家族だけで抱え込まず、
プロに任せることも介護の一部です。

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